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Bushi Entry

絶対階級学園フルコンプクリアした感想

絶対階級学園

フルコンプしたどー。

プレイ時間はだいたい40時間くらいでしょうか。とはいっても、オートモード機能にある「台詞が途中でも次に行く」機能を大半の箇所で使っていて相当ショートカットしてこれなので、ボイス分をすべて聞こうとするとおそらくは倍以上かかるのではないかと思います。

それじゃあネタバレ感想言ってみよう。

三国恋戦記を送り出したDaisy2さんの完全新規タイトルということで、期待もしてましたしすごく身構えてもいましたが、いやー全部きれいに裏切って右斜め上をぶっちぎってくれました。質量はもちろんのこと、内容の攻め方、そしてたたみ方に感服です。

”東京湾沖あるか100kmの孤島――。そこはセレブ子女を集めた煌びやかな学園があった……。”

というのはパッケージにあるコピーですが、ちょっとでもゲームに触れた人からすれば「そりゃそうだけどさ!!」というなんともいえない湧き上がる思いがあるのではないでしょうか。

「良家の子女を集め、厳格な階級制度をしく特殊な学園を舞台にした乙女ゲーム」から多くの人が想定されるだろう、身分の差、立場の差によるロマンス展開……どころじゃない!!

ここで描かれている階級制度とは、とあるコミュニティ内の正統なる法律によって保証された、まごうことなき差別を助長する制度です。暴力および言論による暴力、公然の場所で一方的に罵倒しながらその反論を許さない、反論すれば寄りひどい屈辱を受けかねないという、人権侵害なにそれおいしい? という非常にシビアなものでした。

描写の苛烈さにもびっくりしたんですが、なんつってもその差別構造には、最初は親しげに話しかけてくれた同性のクラスメイトはもとより、攻略対象である5人もばっちり加担していること! 作中序盤で主人公は「差別は良くないものだと教わった」と考え、実際序盤では終始この制度に違和感を覚えてるのは地の文を読んでひしひし伝わってくるわけで、そんな彼女から見れば構造に加担する人たちにはおよそ好印象を持たないだろうって言うのに、それはもう恐れずガツガツ切り込んできます。

初回プレイ時は特に薔薇階級の二人、陸とレイには登場するたび終始「今すぐ殴らせろ!!」と本当に腹を立てていました。陸は傲岸不遜な態度で表立って制度を利用してくるし、レイは穏やかな口調ながら身分制度とそれによって生じている軋轢については常に肯定的でいるし、二人ともそれぞれに差別構造に積極的に加担する人間といえるでしょう。

またミツバチ階級である壱波や萌花も、それぞれに下層階級である石ころには厳しく、露骨に態度を変えてくる。主人公が石ころ階級に堕ちたときの態度の変えっぷりはすばらしいものがありました。石ころ階級の十矢とハルは直接の被差別対象となる二人ですが、その内面も単なる被害者で終わらない複雑さがあってたまらない。

もうもうその思い切った振り方が「これは、これまでと違うゲームや……!」と感じられて最高です。

石ころルートだった1週目はここら辺のコンボがしんどくてしんどくて、実況していたログを見ても真剣にカッカしています。というか、いまも全部みて少し落ち着いているだけで、たまに序盤の展開を見返すとやっぱり頭にきます。恋愛感情をベースにした人と人との相関図を描く作品で、ここまで悪感情を抱く題材を、真正面から誤魔化さずに描いた意気込みにまずはガツンときました。

主人公の階級が変わったことで露骨に態度も変わり、そんな中でも個人的な関係を積み重ねてきた相手と親密になっていき、やがて浮かび上がってくる学園の陰謀……というのが石ころルートの主な筋道ですが、この構成も大変良かった。

学園に隠された秘密はもろにこの階級制度を根底から打ち壊しかねないもので、それを知った人は確実に階級制度に懐疑的になるものです。でも、まず主人公との関係を重ねることで、それまで従順だった階級制度を少しずつ疑っていくという展開をいれることで、「主人公と仲良くなっていくこと」が単純な身分差、周囲からの圧力というロマンス用ギミックに留まらない、彼ら自身の人間性の回復に関わる大きな要因として描かれています。これ展開が逆(陰謀の開示→主人公とのロマンス)だったら、プレイヤーが受け取るニュアンスは絶対的に変わっていたはずです。

また、こうやって大きな苦難に立ち向かう前に一度カップル成立させ、その後に、そう、その後に!再度バッドエンドを設けるというこの思い切り! 一度は心が通じ合い甘い関係を見せておきながら、その後の悲劇的な展開を持ってきていることが、このゲームのチャレンジ振りを感じる要因です。

そんでまたバッドが容赦ないんだ!! ひどい!! プレイヤーの心を折るためだけに(もしくはハッピーエンドへの執着を更にあおるために)用意されているとしか思えない容赦なさ!! ひどい!! 褒めてる!!

ひどいといえば薔薇ルートも酷い!! なんかもう全部酷い!! 前述の通り、ゲーム開始時の主人公は階級制度に非常に懐疑的な人物でした。それでも薔薇ルートに進むということは、単にお上の沙汰だけではない、差別を内包する制度を受け入れた一生徒に変わっていく、という彼女自身の内面の変化があっての結果です。一種の悪堕ち展開といっていいでしょう。

もともと主人公は学園に来る前にたった一人の家族であった父が失踪し、全く身寄りのない状態でこの学園に来ています。ゆえに、普段は非常に明るい逞しさを感じる性格ですが、一方で孤独にさらされると陰りを見せる人物です。

石ころルートでは最初から持っていた自分の筋を通し、階級とともに態度の変わる級友たちに啖呵を切る勇気を持ち合わせる人物でした。が、学園の空気に染まりはじめた頃に上層階級に移ったことで階級性への順応が後押しされた薔薇ルートでは、階級が変わったことで級友たちとの関係はまたがらりと変わりそれゆえに孤独を覚えるものの、それに反発も出来ない人物になっている。よりいっそう孤独にさらされ、その空虚さ、弱さを埋めるために、そばにいた彼らにおぼれていく……。

そんな展開なので、結末も大体ろくでもないこと丸見えだったけど、予想(ある意味期待)を上回る「堕ちるならとことん」精神に拍手を送りたい。

なんというか、主人公のネリはあれで結構「他人に寄りかかりたい」し時に「他人に縋りたい」タイプなんだろうと感じました。それは、馴染んだ場所から引き離され見知らぬ土地にやってきたという不安や寂しさを抱えているからというのもあるし、彼女自身も知らない封印された過去も知らず知らず影響しているのかもしれません。ゆえに「人を疑うことを知らない」というプロフィールの一文にも納得です。自分を支えるために時に他人に縋る彼女は、誰かを疑うことが出来ない。疑いを持てば縋ることもできないから。だから彼女は疑えない。

そんなわけでネリはなかなか人を疑わないので、同時に制度に懐疑的な気持ちを持ったまま石ころ階級に落ち、周囲からのひどい態度に腹を立てながら、ときどき垣間見える対個人の良さや輝きというものに真っ直ぐです。それは時に「人を変える強い力」となって周囲に影響を及ぼしていきます。

階級制度に従順な態度にこそ反発するものの、その人個人の持つ「良さ」には真摯に接する彼女は、時に相手を叱咤し時に良さを伸ばしていく。その結果、石ころ階級の彼女に接した人物は階級制度に疑問を持ち、この学園に苦しみをもたらすものであると少しずつ気がついていく。それが後々明かされる学園の陰謀を暴くときに、彼らに勇気と聡明さを与えていくんですね。

例えば十矢は出会った頃から階級制度に懐疑的で、彼女に正されるところなんかなさそうに見えます。けれど、彼もとある理由から特定の性質を持つ人物には非常に辛い態度で当たり、またそうであることを当然としている人物です。それは学園の階級制度が直接生んだものではないけれど、「他者に対する無理解無慈悲を許容する」という点では非常に近いものといえるでしょう。実際に作中ではネリにその点を指摘され、最初こそ受け入れられず反抗し、けれど少しずつ考えを改めていく。それは結果として十矢の視野を広げ、彼がもつ多くの人を導く指導者としての素質に確実に反映されていったわけです。

同じように、強く階級制度の思想にさらされていた陸、レイ、壱波は彼女に影響され、その考えがただされていく。

階級制度の邪悪な面も積極的に活用している陸はもちろん、誰にでも分け隔てなく穏やかに接する紳士ながら実際には階級制度についての有無を言わせないレイ。この二人に関しては、表向きの性格が違うだけでそれぞれに「石ころは同じ人間じゃない」と思ってる類なので、石ころの身であるネリを心を通わせることで価値観や人生観が変わり、視野が広がっていきます。

壱波は階級制度の厳しい面を知りつつ、すべての面において階級制度があるから仕方ない、どうしようもない、覆せない、立ち向かえないと思っている(だからこそ自分をその階級でありたいという意欲が強い) 彼もまたネリからの真摯な提案に対して、最初こそ「うるさい!」「俺のこと馬鹿にしてんの!」「俺だって考えてんだよ!」と頭ごなしに怒鳴って返すというわかりやすい最低ヤローでしたが、ネリの言い分の正しさには実はちゃんと伝わっているし、伝わったからこそ真相ルートでは本来の頭の回転の良さを発揮し、他に類を見ない発想の柔軟さで困難を切り抜けてきました。

そうそう壱波といえば薔薇ルートの彼のシナリオは特徴的でしたね。選択肢がすべて彼がいないときに発生しており、つまりエンディングに影響する作中の主人公の言動は、パートナーである壱波には届いていない。不安で揺れる主人公の内面を確定するために選択肢があり、その結果「凡庸な一生徒に変わってしまった彼女」に壱波のほうから失望する、という一幕もありました。こういう作りこみも憎いね~~上手いね~~~。

少し毛色の違うのはハルで、彼はあの制度の中でもさらに最下層にいる立場ゆえに、十矢以上に客観的に差別構造の形を知っています。あの制度の本質について誰よりも掴んでいながら、発言力のなさからその指摘を表に出すことができず、自尊心が極限までにすり減らされている状態です。なので、彼に対してネリが行うのは、彼が本来持っている自尊心、プライドといった自分を強く肯定できる気持ち回復すること。彼に出来ること、彼にしか出来ないことを促し、少しずつ発言力を養っていった。

でもね! これがね! 石ころ・薔薇ともにバッドエンドではこの施策がすべて裏目に出て、ネリは善意と好意によって彼を支えているつもりがハルの自尊心を根こそぎ奪ってしまうという、作中でもおそらく最も悪い状態として出てしまうというこの地獄ぶり!! ハルのバッドエンドは全部辛い!! 何もかも奪われ虚無でしかないハルが、文字通りネリには噛み付き傷を与えるのは、彼に最後に残された執着といっていいのか!?  痛みしかない!!

そんな風に感心し、時に胸をかきむしりながら読み進めるプレイ体験は、心から充実していました。

苛酷な環境で心をすり減らしながら、それでも心を通わせ、少しずつ他者に虐げられない/他者を虐げないことに目を向け始める。そして明かされるこの階級制度の強大で卑劣な真の姿に、彼らはそれまで積み上げてきた人間性を胸にして立ち向かっていく。そこに至るまでにはいまにも切れそうな細い線をなんとか手繰り寄せ、ようやく見えた光を力強く掴み取る。その姿に自然と胸が熱くなっていました。

いやー楽しかったー。そうそう、スキップ機能はもちろん、次の選択肢まで暗転一発で進めることが出来るジャンプ機能がすこぶる便利でした。これどのゲームにも必須機能にして欲しいなー。

ほんと楽しかったです。