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あやかしごはんフルコンプ感想

あやかしごはんフルコンプ感想

いまさっきフルコンプした方、仲村です。

ハニビさまの新作だーと飛び込んで1週間ずぶずぶでした。嘘です途中でスタスカカフェいきました。こっちの感想もまたそのうち書くと思います。

というわけでネタバレしない程度の範疇で感想いってみよう。

だいたいのプレイ時間は、各編6時間、スキップ駆使のキャラ攻略で2時間、もろもろ回収してフルコンプまで20時間と言うところでしょうか。攻略対象が6人というのも一般的には多くも少なくもない人数でしたが、全体にコンパクトな印象です。とはいっても内容そのものが気軽なものだったかというと相当に重いし濃い、という感想です。

スタスカや青はじもそうなんですけど、ハニービー製ゲームは「輝かしく愛しい日々を精一杯生きる」という作風ですよね。今回のあやかしごはんもキャッチコピーからして"おいしいごはんを食べればみんな『幸せ』"と真っ向から打ち出してます。過去作をプレイしていても終始そういう空気を感じていたんですが、でもそれは一見とてもポジティブで力強い響きに聞こえるけれど、同時に「いつか亡くなってしまうかもしれないこの輝き」という深い虚無をみつめてるような感じが自分の中にありました。

それはたとえばスタスカ冬における卒業だったり、哉太の身体のことだったり、教師陣の大切な人の顛末だったり。死生観も含めた別れや無に対する恐れや混乱、絶望といったものも折に触れて表現するし、それも誤魔化さずかなりストレートに打ち出してくる、というのがずっと印象にありました。とはいえちょいちょい露出はしても全面にたって出ることはこれまであまりなかったかな、と思っていたところにこの「あやかしごはん」ですよ。

別にそういった要素が嫌だ、みたくないということではもちろんなく。楽しみというのも適切ではないけれど、なんというか、期待はしていました。いつか正面からこういった要素を取り上げるなら、それはいったいどんな形をしているだろうと。

もちろん日々のなんてことのないことを慈しみそれを楽しむ柔らかな空気は維持しつつも、あのいっちゃなんですけど、あの村の周辺で人食い人攫いそのほか怪奇現象おきまくりやんけ! となかなかに世紀末的にシビア。あと予想以上に死に別れ多い! 死ぬよりしんどいバッドエンドも多い!! 人間編冒頭の主人公は生きる意味を見いだせなくて死に一直線だったし、萩之介の過去のエピソードは真剣に怪談だし、トラウマ級の出来事過ぎてプレイ中わーきゃーいうてました。

怖いものみたさも含めた期待の応えはやはり期待以上でした。そこにきてあの大ネタバレの衝撃。もうね、これはね、キタ、とおもいましたね。ハニビ様がこれまでなんとなくチラみせしつつも「そんなことありませんでしたよ?」とすっとぼけていた部分、暗くてじめっとしていて不条理な、闇要素とでもいうべき部分がむき出しになったと思いましたしビンビンに実感しましたね!! 浅葱ルートのバッドエンドは呆然というしかない感想です。あとおまけシナリオの吟さん編が半端なかったです。

また例え幸福な結末に終わっても、公式通販特典の資料集の没シナリオにあったような、ある種の悲しみも折に触れて提示されていましたね。でもさーどう考えても作ってる側も「そこも含めていいよね!!!!」と全力で投げてきてるんだから、こっちとしても「大好きですよ!!!!!!」と同じく全力で打ち返すしかないですよね大好きです!!!!! こういうのおいしいですうううううう!!!!!!!

さまざまな形で死や別れ、絶望といったネガティブな要素が蔓延する中、「おいしいごはんを食べる」「おいしいと感じること」という形で生への渇望や喜びを見出す。辛くて悲しくて涙も枯れるような事態を前に、嫌味なく最も根源的なものをモチーフに生を示してくれる。なんというか、優しいようにみて、抗いがたい要素すぎてこれはこれで厳しい。けれど、丁寧な調理解説とイラスト、なによりキャラクターたちが本当においしそうに食べてくれるおかげでとても魅力的な「ごはん」でした。

グラフィックも背景含めてほぼすべてにカズアキさんがかかわってるようで、スチルも立ち絵も背景もあの村の空気の暖かさ、透明感を表現しているようですばらしかったですね。MANYOさん作のおだやかなのに切なさをくすぐるメロディは、紅葉村に流れる時間の進み方を伝えてくれるようでした。シナリオ、グラフィック、ミュージック、演出すべてにおいて、紅葉村とそこに住まう人の空気を伝えてくれましたし、それが効果的であればあるほどダークサイドもまた深くなるという……ハニビさま、恐ろしい子!!

難をあげるとすれば、シナリオの細かいところで「あれ? そこ流しちゃうの?」というところがいくつか。特に萩之介は「あやかしに興味はあってもあやかしを察知できない」という微妙な立ち位置だけに、もうちょっと丁寧に外堀埋めしてほしかったような気も。そばであやかしが何かして主人公らは本来ありえない結果を得たけど、同じ場にいる萩は違和感を持たないという場面が……そこは「なんで?」みたいに萩之介が驚いて、主人公たちが言い訳をつける展開があるとぐっとキャラにも深みが出たんじゃないかなと。

さらに細かいことを言えば、「あやかしと人が共存する村」という舞台設定が序盤でつかみづらい感じも。言葉では表現されているし、あやかしが見えて縁の深い主人公には違和感は少ないんですけど、あやかしのみえない村人からすればあやかしとはどんな距離感てどういうものなんだろうと。

村人たちは「この村にはあやかしがいる」というのを認識してるのかどうか、伝承にあちこちに残ってるとか、なにかあったらあやかしのせいにされてるとか、そういう台詞があっても大体口にするのは萩之介やスミさんなもんで「あやかし贔屓な人の感想だからでは……」という。クラスメイトらが萩之介のあやかし語りをきいてその感想を口々に言い合う、みたいなシーンがあると良かったのかなーとおもいました。

あとは、登場人物が多いんですけど絵の数が追いついてない感がぐぬぬ。特に富蔵さんや真冬さん、主人公の母親には立ち絵があってほしかったなー。覚醒の詠にも欲しかったなあ。謡はある……とはいってもこの辺、同様のことはPC版スタスカでも多数あって、後に発売されたPSP版では補強された部分だしハニビさまなら、ハニビさまならやってくれる……! と信じてるので今後の展開に期待です。

とりあえずサントラぽちりました。あのパッケージはずるい!!