meganebu

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甘CD After

甘ドラマCD、四季ダミヘパートその後的な何か。気分的にはギャグです。

 

 寄せられた顔は啄むような音を立てて、もう何度目になるかわからないキスを降らせてきている。
 その最中、不用意に加えられた力に対して、私の反応は大幅に遅れた。
(――え、ちょっ……!)
 前に押し返すか後ろを支えるか、どちらに手を突き出すべきか迷っている間にも、目の端に映る光景はスローモーションのように流れていく。
「っ!」
 今度は眦あたりに触れてきたそれに、思わずぎゅっと目を閉じる。それから、どさりと倒れる音と背中から伝わる鈍い衝撃が続く。
 一応、咄嗟に頭を浮かせるようにしたおかげで、打ち付けられたのは背中だけで済んだようだった。
「……」
 怖々と見開いた視界のど真ん中に、彼が居た。
 彼はいつもと変わらないぼんやりとした表情のまま私に伸し掛かってきていて、押し倒された、という事実を否応なく認識させられる。
「……もっと」
 うわごとのように呟くと、彼はさらに半身を屈めてきた。
 私は慌てて、まだかろうじて自由だった両腕を顔の前でクロスさせる。
「ま、待ってっ……」
 制止の声に、彼の動きが止まる。
 が、それはほんの数秒のことで、すぐに私の腕が掴まれ、邪魔とばかりに引っ張られる。
「し、四季く」
「……俺を止められなくしたの、あんた」
 熱っぽい掠れ気味の声が、とてつもなく理不尽な理屈を述べてくる。
 抵抗していた腕はやがて力負けして、私の視界が一気にクリアになった。そして、四季の顔が目一杯に広がって――目を閉じるのと同時に、唇に彼のそれがぶつかった。
「っ……ぅ、んん」
 しばらくして唇は解放されたものの、またすぐに頬や額や鼻、あまつさえ耳までキスの侵食が進んでいく。
 彼の唇の侵攻が首筋にまで至った時点で、私は耐えきれずに大声をあげた。
「ちょっ、ま……だ、だめっ、四季!」
「……」
 肩口に顔を埋めたままの彼の――唇、というか舌の――動きがぴたりと止まり、やがてゆらりと身体が起き上がる。
 そうして彼は、私をとにかく恨めしそうな目で見下ろしてきた。
「……どうして」
「ど、うしてって、……だ、だって、……あの……」
「嫌……なのか」
 伸びてきた手が、私の頬を撫でる。
 透明感があるのに、けれど底の見えない瞳に見据えられて、嘘なんかつけるはずがない。
「そ……う、じゃ、ない……けど」
「なら」
「でっでも!」
 即座に結論を出そうとする彼を遮るように、私は声を張り上げる。
 そのまま、半ばヤケになって叫んだ。
「――こ、こんなところじゃ、ダメっ」
 先程まで点けていたテレビは静まりかえっていて、床はカーペット敷きとはいえ結構固く、確かに一人暮らしをしている分には何ら気にならないかもしれないのだろうけれどもここは紛れもないリビングという部類の部屋なのだ。
「……じゃあ、どこならいい」
 一応理解はしてくれたらしい彼が、普通に直球を放ってくる。
「ど、どこ、って……」
 もちろん彼に何かしらの意図なんてあるはずもなくて、単純にこちらがダメだと言ったからならどこならばいいのかと素朴な疑問を返してきたに過ぎないのだろうけれど、でも女の子の方から指定するようなことでもない気がする。
 とはいえ、口数の少ない――というか、少ない単語だけで会話をする――彼と付き合う中で、何事も言葉にしないと伝わらないということはわりと身に染みていたし、慣れざるを得なかった。これぐらいで恥ずかしがってたら何も始まらない。……多分。
 どこか羞恥プレイに近いものを感じながら、私はぐっと堪えて、回答を口にする。
「……べ、ベッド……とか……」
 たかだか家具の名前一つを発音するだけで、こんなにも恥ずかしいものだとは思わなかった。
 でも、こうでもしないと――さすがにその、初めてが床の上とかいうのはどうかと思――
「どうして」
「……え?」
 いっそ復唱したいぐらいの素朴な疑問が、重ねて返される。
 その上で、彼にしては珍しく、その論拠をすぐに提示してくれた。
「ベッドに行くと……眠くなる」
 ――それは、もはや肯定以外に許されないような論破不能の正論で。
「……だから、行かない」
「え……ちょ、し、四季、まっ――」


 その後のことについては、その……色々と、大変だった……とだけ。





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ついカッとなってやった。反省はしていない。
あとたぶん未遂。