meganebu

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「夢幻抱影」表紙

夢幻抱影

A5/20P/300円
緋紅小説本(18禁)

成人向けの内容を含むため、未成年の方への販売・閲覧は禁止いたします。

実月個人誌。(表紙:仲村)
以前発行した捏造緋影アナザーエンド本の濡れ場パート(の一部)です。

話の性質上、何がどうあろうとも許せる人向けです。

本文サンプルは続きから。

 

◆「夢幻抱影」本文サンプル(※本文途中から)



  彼女はやはりソファにいて、本に目を落としていた。
 その隣へ、ごく当たり前のように腰を下ろす。すると、本から顔を上げた彼女が目を丸くしてこちらを見た。
「……緋影、くん?」
「なに?」
「えっと……寝ないのかなって」
「少し目が冴えてしまったから、眠くなるまでここで休もうと思ってね。君の読書の邪魔になるなら部屋へ戻るけど」
 すらすらと、嘘と真実が入り混じった理由を述べる。
「う、ううん。そんなことないけど……」
 動揺を隠すことなくそう言って、彼女はそそくさと本へ視線を戻した。
 そのまま横目で観察していると、彼女の手がまったく頁を進めていないことに気がついた。
「紅百合」
「っな、なに?」
「さっきからページが進んでいないようだけれど。……やはり邪魔をしてしまったようだな」
 すまない、と付け加えながら立ち上がる。お人好しの彼女の良心をくすぐるのには、これくらいあざとい方がいい。
 一歩を踏み出そうとしたところで、掴みやすいよう彼女の側に残しておいた腕が、ぐっと引っ張られた。
 かかった、という手応えとは裏腹に、驚いた風を装って彼女を振り返る。
 目を合わせた途端、彼女はあからさまに慌て始めた。
「っあ……その、なんていうか」
「紅百合?」
「えっとだから……緋影くんが邪魔なんてことはあるといえばあったかもしれないけど、でもそれは別に緋影くんのせいじゃないっていうか、勝手に緊張してる私の方が悪いだけで、その――」
 一気にまくし立ててくる彼女の言には、一つどうにも気になる箇所があった。
「紅百合」
 ひとまず、落ち着かせるために名前を呼ぶ。
 ぴたりと言葉を止めた彼女の顔は、予想していたよりずっと赤かった。
 ――さて。今彼女は何と言っただろうか。
(勝手に緊張してる、と言ったな)
 それはつまり、こちらの存在を必要以上に意識していた、ということだろう。
 そして、意識せざるを得なかった理由は、もはや考えるまでもない気がした。
(……ああ、そうか)
 唐突に読書をすると言い出して部屋に引っ込んだはずの彼女が、何故リビングで本を読んでいたのか。
 それはつまり彼女も、自分と似たような理由で眠れずにいた、ということではないのか。
「……紅百合」
 どうやら、わざわざこちらから根回しする必要も、理由をこじつける必要もなかったらしい。
 彼女は彼女なりに、しっかりと堕ちてくれていたようだ。
 こちらの袖を掴んだままの彼女の手を、自由になる方の手でそっと外し――そのまま軽く握り込む。
「あ、あの、緋影く」
 もはや言葉を尽くすこともないだろう。
 ソファの背もたれに手をつく。遅れて、身を引いた彼女の背がそこに当たった。
 右手は捕らえたまま、左側はこちらの腕が遮り、背中はソファが後退を阻んでいる。
 完全に逃げ場を失った彼女をさらに追い詰めるように、片膝を座面に乗り上げさせた。
 ぎし、という音に小さく息を呑んだ彼女へ、躊躇なく顔を近づけていく。まだ若干の距離が残っていたものの、彼女は観念したようにぎゅっと両目を瞑った。
 同様に閉じられた彼女の口へ自分のそれを重ね、そのまま強引に割り入った。
「ん、んふ……っ、んぅ」
 逃げる舌先を絡め取る。
 数日前にはされるがまま固まるだけだったそれは、軽く舐るだけでゆるゆると力を抜き、時にささやかな反応を返すまでになっていた。
 鼻で呼吸をすることも覚えたようで、思う様咥内を蹂躙していく。
「っは、ぁ……っ」
 解放して、またすぐに塞ぎにかかる。
 何度か繰り返すうちに彼女からは力が抜け、その体勢を崩させるのは容易だった。
 ずるりと、彼女をソファの座面に押し倒す――いや、引き倒したという方が正確だろうか。
 そこでようやく、彼女は抵抗らしい抵抗を見せた。
「っひ、緋影くん、あのっ」
「なに?」
「あの……ここ、で……するの?」
「そうだけど。なにか問題でも?」
「あ、あるよ! すごくある!」
 予想以上に激しい主張だった。
 しかし、口振りからするに行為そのものは許容しているようだし、一体何が不満だというのか。
「……例えば?」
「それは……」
 いきなり口籠もられてしまった。よほど口にしたくない理由なのだろうか。
「い……言わないと、ダメ、かな」
「まあ、嫌だというなら無理強いをするつもりはないけれど、君がどういったことを問題にしているのかは興味があるね」
 少なくとも、「恥ずかしいから」といった今更な理由ではないのだろう。それとは別に、彼女の中で受け入れられない何らかの理由があるはずだ。
 それに、自分としても場所にこだわりがあったわけではなく、ただ成り行き任せに彼女を貪ろうと思っただけの話である。なので、納得いく理由があるのなら、部屋に移動するのも吝かではなかった。
 紅百合は随分と逡巡した後に、こちらと目を合わせないようにしてぽそぽそと言った。
「……だって、その……そしたら、ここに座る度に思い出しちゃいそうだなって……」
 釈明を終えて真っ赤になった顔には、こう書いてあるように見えた。やっぱり言わなきゃよかった、と。
「その理屈でいうと、君はもう僕の部屋に近寄るのも困難だと、そういうことになるね」
 変わらずそっぽを向いたままの彼女から、うっ、と小さな呻き声が返ってきた。
「何より、そこで過ごしている僕の立場がないんだけど」
「あ、あの、そういう意味じゃなくて」
「へえ。なら、どういう意味なのか教えてもらえると助かるね」
「だからその……緋影くんがどうってことじゃなくて、単に私が気にしすぎっていうか――」
 困り果てている彼女を見るのはそれなりに楽しかったが、このまま押し問答をしていても仕方がない。
 心に満ちる愉楽のまま、押し通してしまうことにした。
「なら、慣れればいいんじゃないか」
「え?」
「ここでの生活に慣れたように、気にならなくなるぐらいに慣れればいいだろう」
「慣れるって……」
 言わんとすることに理解が及んだのだろう、彼女は打ち上げられた魚のように口をぱくぱくとさせている。
 そこでふと、以前似たようなやり取りをしたことを思い出した。
「ああそれとも、お姫様抱っこから始めた方が良かったかな」
「な……!」
 反応からするに、彼女も荷物を運搬した時のことを覚えていたらしい。
「……っひ、緋影くん、は」
 ばつが悪そうにしていた紅百合は、やがて最後の悪足掻きとばかりに、こんなことを言った。
「そう、したい……の?」
 どうやら、責任の所在を自分以外の所に持ちたいようだ。
「そうだと言ったら?」
 間髪入れずに返してやると、降参したとばかりにか細い了承が戻された。



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装丁のわりにろくすっぽえろくない話です。