meganebu

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meganebu Paper -7

2013年1月6日 COMIC CITY大阪92にて、無料配布していたペーパーです。
タイトーくじの描き下ろし絵ネタ。

 

 

「郁って、煙草を吸ってたの?」
 藪から棒にそんなことを聞いてきた月子は、どこか不安げな瞳を向けてきていた。
「ちょっと、急にどうかしたの」
 笑って受け流そうとしてみたけれど、彼女の表情は浮かないままだ。
 やれやれ、と思いながらきちんと彼女の方へと向き直る。
「まあ、そんな時もあったかな。もちろん、今は違うけど」
 それは知ってるよね、と目配せすると、月子はこくりと頷いた。
「それで、どうしてそんなことを聞くのかな」
 からかうように、至近距離から瞳を覗き込む。
 たったそれだけで僅かに頬を染め上げながら、月子は気まずそうに目を逸らした。
「……その」
 やんわりとこちらを押し戻すような仕草を見せてから、月子は背中の方に隠していたらしいファイルケースを取り出した。
 そこから一枚の写真を抜き出して、差し出してくる。
「これなんだけど……」
 受け取った写真には、星月学園の生徒達がそれぞれにポーズを決めて写っている。中には琥太にぃもいれば陽日先生もいるし、その一番端に自分もいた。
 そして、隅の方で一人佇む自分の口元には、煙草が咥えられているのだ。
 しかもうっすらと煙のようなものまで写り込んでいるため、どう見ても自分が喫煙しているようにしか見えない。
「なるほどね。一体誰から……って、琥春さんしかいないか」
「うん。ほらこの間、学園まで忘れ物を届けに行ったじゃない? 帰ろうとしたら、偶然琥春さんに会って」
 曰く、わざわざ来てくれたお花ちゃんにいいものをあげるわ、と渡されたらしい。
「学園のパンフレット用の写真だって聞いたんだけど……」
「そうらしいね。まあ、結局企画倒れになったみたいだけど」
 そう、この写真は何を思ったか学園のパンフレット用に撮影されたものであったりする。
 普段は真面目に星について学んでいるが、学園祭などのイベント事では生徒の創意工夫を尊重していますとか、学問一辺倒では決してない若者らしい雰囲気だとか、よくはわからないがそういったイメージ戦略の一環であったらしい。
 で、最終的には色々と的外れだろうということでお蔵入りになった一枚のはずだ。
「……とまあ、僕が知ってるのはそんなぐらいなんだけど、他に何か琥春さんから聞いてる?」
「ううん。わたしも、使うはずだったけど没になったくらいしか……整理をしてたら出てきたから、お花ちゃんにあげるわねって」
「そっか。まあ、使われなくて良かったって思うよ」
 溜息混じりに呟くと、月子も苦笑を浮かべた。
「……でも、何で郁だけ煙草を吸ってるの?」
「さあ? 僕も撮影があるからって呼ばれて行って、ポーズとか指示されるままにやっただけだし」
「学園のパンフレットなのに……?」
 尤もなツッコミを呟く月子に、今度はこちらが苦笑する番だった。
 本当、どうしてこの話を誰も止めなかったんだろうか。
(……いや。琥春さんの企画の時点で止められる人物がいるはずもないか……)
「そもそもこの写真、僕だけ別撮りだし」
「え!? そ、そうなの?」
「そうだよ。これを撮ったとき僕はまだ学生だったからね。予定が合わなかったから、後日一人で撮影したんだけど」
 まさかこんな風に合成されているとは。
(隣の宮地君が持つ花束に被るから、少し離れた位置に配置するしかなかったんだろうけど……)
 それにしたって他の面子と妙な距離が開きすぎてはいないだろうか、これは。
(……まあ、別にいいけど。どうせ没になったんだし)
「郁。これって、本物だったの?」
 写真の中の自分――その口元を示しながら、月子。
「もちろん。でも、火は点けてなかったはずなんだけどね」
「え? でも、煙が……」
「こういった撮影スタジオは基本的に火気厳禁だよ。煙探知機とかが反応するしね。だから、僕を合成するときに演出として付け加えたんじゃないかな」
 学園のパンフレット用ということは聞いていたし、撮影時に吸ってくれと言われていたら、さすがに自分だっておかしいと思う。まあ、撮影と編集それぞれのスタッフ間で何らかの齟齬でもあったんじゃないだろうか。
「そ、そうなんだ……」
 どこかほっとしたような声で呟いたわりに、月子の視線は写真から離れようとしなかった。
「何? お子様の月子は煙草に興味があるの?」
「ち、違います。あと、お子様じゃありません」
 小さく頬を膨らませながら言われても、何の説得力もないのだけれど。まあ可愛いからいいか。
「……吸ってたのが、ちょっと意外だったなって思っただけで」
「そう? まあ、大人の嗜みっていうのかな」
 大人の僕は、お子様の君とは違う。
 それはいつもと変わらぬからかいの言葉でしかないつもりだった。けれど、
「でも、煙草は健康に良くないっていうし、それに喉にだって――」
 とそこまで口にして、月子は気付かなくてもいいことに気付いてしまったらしい。
「……郁」
 心配と不安が入り交じった表情で、月子がこちらを見つめてくる。
(まったく……普段は鈍いくせに、どうしてこういうところだけ鋭いかな)
 誤魔化そうかと思ったけれど、月子の瞳の真剣さからして、簡単には誤魔化されてくれそうにない。
 なので、早々に白旗を掲げることにした。
「確かにね。まあ……僕がそれを吸い始めた頃は、もうそんなこと気にする必要もない頃だったから」
 酷使しすぎて使い物にならなくなった喉と、どうしようもない喪失感。
 それらを抱えて、生きている意味すらわからなくなっていた。
 煙草なんかに手を出したのはそんな頃だ。
「……ごめんなさい」
「どうして謝るの」
 月子は項垂れたまま、だって、と力なく呟いた。
「昔の話だよ」
 そう、これは昔の話。
 今こうして心穏やかに過ごせる日々が訪れるなんて、考えもしなかった頃のこと。
「……吸うと、気が紛れるって聞いたんだ」
 誰から聞いたのだったかはもう忘れてしまった。
 嫌なことやイライラするようなことがあった時に吸うのだと――いや、単純に吸ってないとやってられない、という話だったかもしれない。
 そう確か、話を聞いたのはまだボーカルとして活動していた時分だった。
 煙草のように喉を痛めかねない代物は、姉さんのために歌を歌っていた自分には無縁の代物だと、そう思っていた。
 やがて自分は、歌う意義どころか歌うことそのものを失った。
 その時、何かの拍子にふと思い出してしまったのだ。
 自暴自棄に生きることしかできなくなっていた自分は、藁にもすがる思いで「それ」に手を出した。
「でも、僕の気は紛れなかったから。すぐに止めて、もっと他の、気が紛れる方に行ったんだ」
 それは、たくさんの女達。
 落ちぶれた自分をちやほやして利用しては捨てていく――その前に自分から捨ててやった彼女たち。
「郁……」
 未だ心配そうな瞳を向けてくる彼女に、にっこりと笑みを浮かべてやる。
「もちろん、今はそんなつもりもないよ」
 その細い肩を抱き寄せ、温もりを感じながら、耳元に囁いた。
「だって、僕のことをこんなにも飽きさせないお子様がいるんだから、ね?」



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タイトーくじの描き下ろし絵の奴がなんか見覚えあると思って何となくグラサン描き足してみたら
どう見ても某ファミリーの幹部です本当にありがとうございました。(実月)

メインが中央張ってる中で水嶋が確実にそれハブられだろって立ち位置にあると安心するクラスタです。(仲村)