MM2
B5/28P/300円
水嶋誕生日本
1つの話を仲村(漫画)と実月(小説)で描(書)いてます。基本的に郁月です。
☆仲村(漫画)
☆実月(小説)
寮の門限が近いということで生徒達を強制送還させると、屋上庭園は一気に静かになった。
生徒と一緒になって勝手に盛り上がっていた陽日先生は早いうちから出来上がってしまい、そのへべれけぶりに生徒からも呆れられて放置プレイを推奨され、 今ではゾンビのようにビニールシートの上で転がっている。
「……相変わらずペースを考えない人だな、陽日先生は」
「そう言ってやるな。話を聞いてこれ以上ないくらい張り切ってたんだぞ、直獅は」
「張り切るのは勝手だけど、そろそろ『有難迷惑』って言葉を覚えてくれてもいいと思うな」
「お前も、相変わらず素直じゃないな」
ムキになって反論するのもどうかと思い、ビールの缶に口を付ける。中身は既に空だったけど、誤魔化せるなら何でもいい。
「そういや、今夜雨が降らないようにって大量のてるてる坊主を作ってたな。生徒と一緒に」
「それ、単に酒を飲む口実を潰されたくなかっただけじゃないの」
「否定はしない。でも、晴れて良かっただろ?」
「そりゃあ、まあ……こんな山奥まで呼び出されたからには、天体観測ぐらいしないと元が取れないし」
「だろう? いいから、素直に楽しんでやれ。そしたら、夜久の頑張りも報われる」
あいつ――今日の主催者である、月子のことか。
月子も生徒の一人には違いないので、先程野郎共と一緒に寮へと帰した―のだが、主催および保健係として酔っぱらった先生を放っておけないなどと言い出 し、水を貰って一度戻ってくるつもりらしい。
「……ああ、そうだ。お前に伝言を預かってた」
「伝言? 誰から」
「夜久の計画で、唯一の不参加者から」
まだ他に参加者候補がいたのか。月子は一体、今日のためにどれだけ根回しをしたんだろう。
「……もしかして、琥春さん?」
少し考えてから出した答えに、琥太にぃは正解、と呟いた。
ジュースの缶を煽ってから、どこかうんざりと続ける。
「どうしても都合が合わなかったみたいでな。電話口でさんざん子供みたいな恨み言を聞かされた。まあ、来てたらもっと騒がしいことになってただろう が……」
その光景がありありと思い浮かんで、苦笑する。
琥太にぃは小さくため息をついてから両目を閉じ、面倒そうに伝言を諳んじた。
「郁、お誕生日おめでとう。確か今年は卒業よね、体に気を付けて頑張りなさい。そうそう、お花ちゃんを泣かせるような真似はしないように。したらみっちり お説教してあげるから覚悟なさい。……だそうだ」
やる気のない棒読みで伝えられた祝辞は、その大半が不穏な単語で満ちていた。
「ありがとう、って伝えておいてもらえるかな。それと、……その『お花ちゃん』については、一応、心に留めておくって」
「一応、でいいのか? 俺はその通りに伝えるからな」
琥太にぃの姉である琥春さんも、自分にとっては姉のようなものだ。
一度たりとも逆らえた試しはない。
(そこは、姉さんと同じなんだよな……)
さり気なくポケットに手をやると、中身が小さな音をたてた。
指先でそれを摘んで、ふああと欠伸をしている琥太にぃに気付かれないよう、ゆっくりとポケットから引き出す。
今日、琥太にぃの呼び出しを受けたのは、これを渡すためでもあった。
「……あの、さ。琥太にぃ」
昼間から好き勝手絡んできた野郎共は帰ったし、陽日先生は爆睡中、月子もまだ戻らない。
渡すなら今がチャンスだ。
「これを――」
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よーしメガネを祝うぜ! と二人で張り切ってみたら全力で明後日の方向へすっ飛んだ感じの本です。