meganebu

Offline

Juvenile_hyousi.jpg

Juvenile

B5/50P/500円
錫也ルート後の春組合同誌

 

錫也ルート後、秋ぐらいに春組がなんやかややってる話です。
具体的には、余裕のないオカンと色々踏ん切りつけようとする哉太の話。
仲村(漫画):錫月パート / 実月(小説):哉太パート でお送りします。

本文サンプルは続きから。

 

 

☆仲村(漫画)

☆実月(小説)



(本文途中から)


「つーか、本当ならお前をどっかに連れてってやるべきなんだよな……どうする、何なら今から街にでも出るか?」
 羊は十月の頭から二週間の秋休みを取ってきていた。
 でも平日は学校があるから放課後しか付き合えない。だったら、休日ぐらいは観光にでも連れてってやるべきだ。
 と、心優しい俺はそう思ったわけなんだが……羊の奴、何故か蔑むような目でこっちを見てやがる。
「……哉太、まさか二人の後をつけるつもり?」
「はぁ? んなわけあるか! だいたい、そんなことしたら後が怖すぎるっつーの」
「……確かに」
 はあ、と二人同時にため息をつく。
 多分今、俺達の脳裏に去来したのは同じ映像に違いない。
 今年のエイプリルフールあたりのこっぴどい説教風景。アレはマジに怖かった。生きてる心地がしなかったぜ。
「鉢合わせして邪魔するわけにいかねーし、二人が行きそうにないとこに行けばいいだろ」
「……ねえ、哉太」
 手摺りから軽く乗り出すようにして、さっきから下の方をきょろきょろ見ていた羊が顔を上げた。
「哉太は準備とかしなくていいの?」
「あん? 準備って、何のだよ」
「だから文化祭の。みんなやってるじゃない」
 言って、羊が地上の方を指差す。
 準備に勤しんでる奴らなんざ、ここに来るまでに嫌でも見てきたわけだが……まあ一応、示された方を覗いてやる。
 お、さっきより人数増えてきてるな。
「っても、俺記録係だし」
「記録係?」
 怪訝そうな顔をする羊に、俺はポケットからデジカメを取り出してみせた。
「準備してるとことか、当日の写真を撮るんだよ。こういうのってさ、準備とかやりながらだと撮るの忘れがちなんだよな。卒業アルバムとかにも使うだろう し」
「何それ。そんなのでいいの?」
「いーんだよ。そりゃ、力仕事とかある程度は手伝うけどさ、ほら……その、俺あんま持続時間ねえし」
 俺は力はそれなりにある方だけど、身体があまり丈夫でないせいか、長くは保たない。
 何より、無茶して倒れられても困るし、哉太の写真の腕は信用できるし、と言い出したのは錫也と月子なのだ。
 でもって、クラスの誰もそれに反対しなかった。
 そりゃあ俺だって力仕事ぐらいって思うけど、準備中にぶっ倒れたりしたら迷惑しかかからないのも事実なわけで……だから、俺もその案に乗っただけだ。
 なのに、羊はじっとりと俺を見つめて、こう言うのだ。
「……哉太、ちゃんと病院行ってるの?」
 ――ぎくり。
 な、何だ? 随分勘が良くなってねーか、こいつ。
「哉太」
 何も答えない俺を追い詰めるように、羊が俺の名前を繰り返す。
「う、うるせーな。行ってるよ、……その、時々は」
 語尾だけをぼそぼそと小さく告げながら、そういえば最近錫也もうるさく言わなくなったな、ということに思い当たる。
 羊はしばらく半眼で俺の方を見ていたものの、やがて何も言わず目を逸らした。そしてまた地上の方を見下ろし、今度は別のことを言ってくる。
「ねえ、クラスのみんなも準備やってるの?」
「え? あー、そうだな。なんかやるとか言ってたな」
 一昨日あたりだったかに、土日も使えば間に合うだろとかどうとか、梨本達が騒いでいた気がする。
「そっか。じゃあ僕手伝いに行ってくる」
「手伝いって……羊、お前は文化祭を見に来たんだろーが」
「そうだけど、僕だって元クラスメイトなんだから、手伝ってもおかしくないと思う」
 羊の言っていることは正論――かもしれなかった。正直よくわかんねえけど。でも、間違いではない気がする。ただ……
「いや、でもよ……」
「哉太の分まで働いてくるよ」
 言い淀む俺の言葉に被せるようにそう言って、羊はすたすたと歩き出した。
「お、おい、羊」
「お昼になったら戻ってくるからね」
「は? 昼?」
 おい羊、お前は手伝いに行くんじゃなかったのか。何で昼の話になってるんだ。しかもあと一時間ちょいで昼だぞ。
 俺の脳内ツッコミすら読み取ったのか、再び羊は呆れ顔になった。
「哉太が、さっき錫也からもらったお弁当をいらないってことならそれでいいけど」
 言われて、錫也から四人分の弁当を強奪してきたことを思い出す。
「ばっ、んなのいるに決まってんだろーが!」
「じゃあそれ、持って行っても手伝いの邪魔になっちゃうから、哉太ちゃんと見張っててね」
 いつの間にか俺の足下に置かれていた弁当の包み(中身は何段もある重箱だ)を示して、羊は嬉しそうに微笑んだ。
 こいつ本当、食い物絡みになるといい表情しやがる。
「じゃあ後で!」
 軽く手を上げて、羊は屋上庭園の入口へと走っていった。
「……行っちまった」
 止めれば良かったのか――けれどさっき、否定の言葉を続けようとした瞬間、ほんの僅かに羊の表情が険しくなった気がしていた。
(……「今はクラスの人間じゃねえんだし」なんて、仲間はずれにしてるみたいだよな……)


----------------

秋と言えば文化祭ですよねーってことで。何だかんだでメガネもいるよ!(ちょっとだけ)