同棲はじめました!
A5/46P/400円
哉月小説合同誌(18禁)
成人向けの内容を含むため、未成年の方への販売・閲覧は禁止いたします。
カゼマカセの一沙さんと実月による哉太×月子R18合同誌です。同棲時代でいちゃえろ的な何か。
表紙と口絵を仲村が担当してます。
実月の本文サンプルは続きから。
(本文途中から)
そんなわけで、俺は師匠と一緒に国内どころか世界中を飛び回る日々が続いていた。
とはいえ、ずっと飛び回ったままというわけじゃない。いわゆる撮影旅行なわけだから、目的のものが撮れれば普通に日本へ戻ってくる。
その日も俺は、帰国して師匠の手伝いを済ませてから、久方ぶりに家へと戻った。月子の待つ、まあその、いわゆるマイホームってやつだ。
まだ独り立ちもできてないし、月子も学生だし、結婚してるわけじゃないけど、いずれはそうなる予定なわけで、うん、いいよなあマイホームって響き。
「お帰りなさい!」
一週間ぶりに会った月子は妙にご機嫌だった。
そんなに俺に会いたかったのかいや俺も会いたかったけど、と感極まって抱き締めようとしたところ、
「あのね哉太、ちょっと見て欲しいものがあるの」
抱き寄せようとしていた腕を逆に掴まれて、ぐいぐいと引っ張られる俺。
「お、おい何だよ急に」
「いいから!」
もはやぎゅっと抱き締めるムードなんざ吹っ飛んで欠片も残っちゃいない。俺はスリッパも履かせてもらえないままリビングへと連行された。
「……何だ、それ?」
見慣れたリビングの中で、見慣れない紙袋が一つ。月子が見て欲しいものっていうのはこれのことだろう。
「ふふ、何でしょう?」
月子は俺の腕を離すと、がさがさと袋の中身を取り出し、
「じゃじゃーん!」
効果音付きで見せびらかしてきたそれは、真っ白な服だった。
それも男物のジャケット。その下には、対になるであろう白のパンツ。
見覚えはあるものの、引っ越しの時に持ってきた覚えのないものが、そこにはあった。
「っんな、そ、それは……!」
驚く俺を見た月子が満足そうな笑みを浮かべる。
おまけに「にこにこ」じゃなくて完全に「にやにや」って感じなんですけど!
「どうしてそれがここにあんだよ!?」
「この間ね、必要なものがあって実家に取りに戻ったんだけど、その時偶然まゆみさんに会ったの。そしたら、面白いものがあるから持って行かない?って」
(あんのババァ、余計なことを)
そう毒づいていると、衣替えついでに掃除をしてたら出てきたって、と聞いてもいないのに月子が説明を追加してくれた。
くそ、もう絶対着ないだろうと思って適当に納戸に放り込んどいたのがマズかったか。
「これって、哉太のなんだよね?」
「……まーな。一回しか着てねえけど」
うわー、月子さんの目がきらっきら輝いちゃってるんですけど。いつ着たの?って目だけで聞かれちゃってるんですけど。
「つーかそれ、お前のせいで着るハメになったんだけどな」
「え?」
いつまでも突っ立って話をするのもめんどくさくなってきたので、俺はよっこらせとソファに腰を下ろした。すると隣に月子が座って、その分だけソファが沈む。
(……あー、うちに帰ってきたなーって感じする)
などと一人でしみじみと幸せに浸りつつ、俺は事情をかいつまんで説明してやった。
あれはまだ星月学園にいた頃、二年の時の話だ。
俺と錫也と羊、宮地に神楽坂、さらに青空で、妙に気落ちしてる風な月子を元気付けよう――ってことで、俺達は屋上庭園でのお茶会を企画した。
まあ月子が元気のなかった原因を考えれば、俺達の計画はある意味失敗とも言えたわけなんだが……。
(中略)
やたらにまにまと嬉しそうな笑みを浮かべて、月子はこんなことを告げてきた。
「じゃあ、哉太がそれ着て見せてくれたら、琥春さんにお願いしないであげる」
「……は!?」
思ってもみなかったことを告げられて、俺は普通に動揺した。
「ダメ?」
いやそんな可愛らしく小首傾げながら聞いてくるな! 思わずわかったって言いそうになったじゃねーか!
「ダメならメールしようかな」
「やめろ! ――っわ、わかった、着てやる! 着てやるからメールはするな!」
言った側からあまりにもあっさり折れすぎだろう俺、とは思う。
でも錫也を始めとする、やたら似合いまくってた奴らと一緒に映ってるところを見られるぐらいだったら、今ピンで見られた方がよっぽどマシだ。
とまあ半ば自棄気味に開き直った俺の脳みそが、そのとき突然閃いた。こう電球がピコーンと光る感じに。
こうなった以上もう言うだけ言っちまえと、俺は勢いのままにこう続けた。
「でも条件がある!」
「条件?」
復唱する月子に、俺は余裕ぶって頷いてみせた。
「お……お、オホン」
見せかけの余裕はあっという間に霧散して、俺は噛みそうになったのをわざとらしい咳払いで誤魔化す。
結果として、いっぱいいっぱいになった俺から説得力のある言葉が出てくるわけもなく――俺はひたすら言い訳がましい条件を提示する羽目になった。
「っお、俺だけ着替えるのはなんか不公平だろ。だから、お前も着替えるんだったら、着替えてやってもいい」
「私も?」
不思議そうに自身を指で示した月子は、うーん、と考える素振りを見せつつも、難色を示した。
まあそりゃそうだよな、と納得していると、
「……男物はさすがに私には大きいんじゃないかな……」
「ってそうじゃねーよ!」
思わず素でツッコんでしまった。真剣な顔で考え込んでると思ったら何考えてやがんだこいつは。
「お前にも、い、衣装があっただろ。ほ、ほらその……が、学園祭んときの……」
そのものズバリを口にするのは何となく憚られて、もごもごと言葉尻が窄まっていく。
「……メイド服?」
「そ、そう、それ! お、おおお前もそれに着替えるっつーんだったら、き、着てやらなくもない」
思いっきりどもりつつも、腕組みして軽くふんぞり返るとかして鷹揚さをアピールする俺マジ必死すぎる。
「……」
黙り込んでしまった相手の様子を窺ってみると、月子は再度真剣な顔で考え込んでしまっていた。
(……まさか月子があのメイド服をこの家に持ってきてるわきゃないだろーし)
それに、俺を着替えさせるためだけにわざわざ取りに行ってくる、なんてこともないだろう。
だから月子は諦めるに違いない。
もし万が一、じゃあ取りに行ってくる、となったとしても、今日は遅いからと引き留めればいい。
後日本当に取ってきた場合は――まあ、それはそれで役得だし、着替えるくらいは我慢してもいい。
とまあ、ひとまず今日この場で着替えることだけはうまいこと避けられるに違いない。
我ながら完璧な作戦すぎると、俺は高をくくっていた。
「……わかった」
すっくと立ち上がった月子は、少しだけ頬を赤くして――決然と俺の正面に立ち、
「き、着替えてくるから、哉太もちゃんと着替えて」
手にしていた真っ白なジャケットを俺の方に押し付けて、ぱたぱたと部屋を出て行こうとする。
「え、お、おい月子」
「約束ね! 守らなかったら、……しばらく実家に帰っちゃうから!」
「ちょ、おま――」
呼びかけの途中で、無情にもドアが閉まる。
「……マジで?」
一人残された俺の呟きに答えてくれる奴なんて、当然ながら誰も居なかった。
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どこかで見たことある流れとか言わない。
先に言っておくと実月担当分はエロも萌えも大変に薄いです。そのあたりは一沙さんパートにご期待ください☆