meganebu

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蒼色遊戯

A5/22P/300円
「死神と少女」 蒼紗夜合同誌

 

蒼ルート後の蒼さんと紗夜さんの本です。 
漫画(仲村)と小説(実月)で1本ずつ描(書)いてます。

 

本文サンプルは続きから。

 

 

☆仲村(漫画)

 

 

 

☆実月(小説)



 きっかけはとても些細なことだった。
 思い返してみれば、一体どのあたりが原因だったのかうまく判別できないほどの、本当に些細なことでしかなく。
「……」
 彼の瞳から目を逸らしただけでは飽き足らず、背を向けてしまった今、落ち着いて考え直してみると。
(……ええと?)
 どうしてここまで憤る必要があったのだろうと、首を傾げてしまいそうになった。
 いつもと同じに彼と話をし、その中で見解の相違だとか認識の齟齬のようなものがいくつかあって、議論めいたものが始まった。
 そのうちに私は、何でもないようなことでムキになって反論を始め――俗っぽい表現をするなら、「ついカッとなって」という表現が一番しっくり来るかもしれない――先述した状況へと至っていた。
 だから、こんな風に彼に背を向けたままでいる必要など、本当はどこにもないかもしれなかった。
(……ですが)
 自分で言うのも何なのだけれど、私はわりと意地っ張りな方なのだと思う。
 そして、他人には極力そういったところを見せないようにしていた。でも、彼を前にするとそうも言ってられなくなる。
 何故なら、世間一般の感覚と比較すると――こう言っては本当に何なのだけれど――彼は明らかにズレた感覚の持ち主だからだ。
 頭の回転は悪いどころか早すぎるほどだし、物覚えだってとても良い。
 けれど、どこか致命的に抜けている、のだ。
(たちの悪い天然、とでも言いましょうか)
 具体例を挙げると、遠回しに物事を伝えようとすれば、まず伝わらない。
 告げた言葉は額面通りに解釈され、その裏に込められた嫌味や本音はわかってはもらえない。下手をすると、「何やらわけのわからないことをしているな」という感想と共に、潔いまでに受け流されることすらある。
 だから、彼の前では何の誤魔化しもきかない。
 あるがまま、己の感情をストレートにぶつける他にない。
 そうでなければ伝わらない。
 ――そうまでしてでも、解って欲しい。
(……これが、惚れた弱み、というものなのでしょうか)
 どこか悔しさにも似た何かを噛み締めつつ、けれど今更折れるタイミングというのも逸してしまった気がして、私はただ悶々と背を向け続けていた。
 やがて、
「紗夜」
 いつもの、静かで低い声が、私を呼んだ。
(……)
 それだけで、私の心は十二分に満たされる。
 ああ、まだ彼は私のことを好きでいてくれる。呆れられたり、飽きられたりもされていない。
 そのことにひどく満たされて――けれど、だからこそ、私の身体はぴくりとも動こうとしなかった。
(……彼は、何も悪くはないのに)
 悪いのは私。
 そんな彼の態度に独り相撲をとって、空回りしているかのような心地に陥っている、私が悪いだけで。
「紗夜?」
 黙ったままの私を呼ぶ声に、疑問系が伴う。
 何故黙っているのかがわからない。彼の呼びかけは暗にそう主張している。
 途端、言いようのない悔しさが全身を支配した。
(ええ――ええ。そうですよね。貴方にはわからない。私がどんな想いでいるかということも、全部)
 これは完全な八つ当たり。
 それがわかっていながら、否、わかっているからこそ、もう私は自分を止めることができなかった。
「――はい。何でしょうかイリヤさん」
 振り返り、にっこりとした対外的な笑みを顔に貼り付けて、そう答える。
「……紗夜」
「何でしょうイリヤさん」
「……、紗夜」
「はい、イリヤさん」
 呼ばれる名前と、呼び返す名前。
 傍から見れば、それは普段と変わらぬやりとりに見えなくもないだろう。
 けれど一点だけ、決定的な違いがある。
 彼はじっと私を見つめたまま僅かに黙考し、またいつもと同じに私の名前を呼んだ。
「以前、私は蒼でいいと言ったはずだが。敬称も不要だ」
「ええ。そうでしたね、イリヤさん」
 にこやかに同意しながら、けれど私は彼のことをそう呼んだ。彼の、本来の名前を――どこまでも他人行儀にさん付けで。
「……紗夜」
「はい、イリヤさん」
 今度こそ彼の声色に呆れめいたものが混じった、そんな気がした。
 そのことに僅かな動揺を覚えながら、私はそれを決して表に出さないよう気を配った。
「何を怒っている」



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何も打ち合わせせんと原稿あげてみたら二人して蒼さんの本名弄りしてたりなどしていた。反省はしていない。