70億分の1の物語
A5/16P/200円
S寄りタクアキ合同誌
S寄りタクトとアキラの(ペラい)本です。
漫画(仲村)と小説(実月)で1本ずつ描(書)いてます。
内容にはタクトSエンドのネタバレを含みます。
本文サンプルは続きから。
☆仲村(漫画)
☆実月(小説)
広がっていく紅の色。
世界を覆い尽くしていくその色は、いまやわたしの心の中まで塗り替えようとしている。
(……ああ)
皆が次々と倒れていった。
世界を救おうと戦ってきた仲間たちが、一人また一人と世界から失われていった。
わたしの目の届かない場所で。
わたしの目の前にいる人の手によって。
事実を受け入れられないわたしに、彼はまざまざと現実を見せつけてくれた。
鮮やかすぎるほどの紅。
それは、青の世界を食らい尽くして、飲み込んでいく。無くなっていく。
わたしが、わたしたちが――そして何より彼こそが、守ろうとしていたはずものが。
もうどこにもない。取り返しがつかない。取り戻せるはずもない。みんなみんな、失われていく――タクトくんだけを残して。
そうした光景を、楽しくてきれいだと述べる彼を見て、わたしはようやく体の力を抜いた。
(……わたしが、やったんだ)
認めてしまえば、納得も早かった。
(わたしが、……世界をこんなにしてしまったんだ)
誰よりも優しいこの人を、こんなにも壊してしまうことで。
この人の優しさを、わたしはこんな風に使わせてしまった。
(全部、わたしの、せいなんだ)
そうして、改めて世界を眺めてみれば、
(――……きれい)
なにもかもが色鮮やかに見えるようになっていた。
ただのふざけた揶揄にしか聞こえなかった彼の言葉すらも、とても魅力的で素晴らしいことのように思えてくる。
「あー今うれしそうな顔したね?」
彼も嬉しそうに口元を歪めてくれた。
(うん、嬉しい)
あなたが嬉しいと思ってくれたことが、嬉しい。
あなたにこんな真似をさせてしまったのに、それでもあなたが嬉しそうに言ってくれること。
今にも壊れてしまいそうなわたしが縋れるものは、もうそれしかなかったから。
「だったら、ご褒美に気持ちいいことしてあげる」
初めてのキスは、確かに気持ちがいいと感じた。
もうわたしには彼しかいない。彼だけがわたしのすべて。彼こそがわたしの世界。
「二人で楽しいことしながら、世界の終わりを眺めていようよ。ね? 僕のアキラ」
「うん……そうだね」
その彼がわたしを求めてくれるというのなら、それはどれほどの悦びだろう。
「やっと素直になったね」
彼が笑う。嬉しそうに。本当に、心の底から嬉しそうに。
その表情が、わたしの心をどろりとした安寧へと導く。
彼がそんな風に笑ってくれるのであれば。
わたしがしてしまったことは、決して間違ったことばかりではなかったのだと、そう思えて。
そうしてわたしは、微笑みすら浮かべて、失われていく青の最期を見送った。
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タクレスCDに全部持ってかれた結果のペラ本です。